うと思っていたところなの」
そういうおかあさんのうしろから、
「や、やあ、ふ、文彥くん、お、お帰り」
と、顔をだしたのは、たいへん風変わりな人物だった。よれよれの著物によれよれのはかま、それにいつ床屋へいったかわからぬくらい、髪をもじゃもじゃにして、少しどもるくせのある、小柄でひんそうなひとなのだ。
そのひとはにこにこしながら奧から出てきたが、ひと目文彥の顔を見ると、
「や、や、どうしたんだ、文彥くん? き、きみはまるで、ゆ、ゆうれいでも見たような、顔をしているじゃないか」
ああ、それにしてもこの金田一先生というのは、いったい何者なのだろうか。
ひょっとすると諸君のなかには、もうこの名を知っているひとがあるかもしれないが……。
名探偵、|金《きん》|田《だ》|一《いち》|耕《こう》|助《すけ》
金田一耕助。――と、いう珍しい名まえは、そうざらにあるものではない。だから諸君のなかにもその名を聞いて、ハハアと思いあたるかたもあることだろう。
名探偵、金田一耕助! そうだ。そのとおりなのだ。みなりこそ貧弱だが、顔つきこそひんそうではあるが、金田一耕助といえば、日本でも一、二といわれる名探偵。その腕のさえ、頭のよさ、いかなる怪事件、難事件でも、もののみごとに、ズバリと解決していく推理力のすばらしさ。
その金田一耕助は、むかしから文彥のおとうさんとは、兄弟のように親しくしている仲だったが、きょう、はからずもテレビのたずねびとの時間に、文彥の名を聞いて、ふしぎに思ってたずねてきたのだった。
「文彥くん、どうしたんだね。それできみは、大野健蔵というひとのところへいってきたのかね」
「はい、いってきました。でも、先生、それがとてもみょうなんです」
「みょうというのは……?」
そこで文彥は問われるままに、きょう一日のふしぎなできごとを、くわしく話して聞かせた。途中で出會った気味の悪い老婆のこと、大野老人のけがのこと、ダイヤがたのあざ[#「あざ」に傍點]を眨�伽槨欷郡長取ⅴ昆ぅ浹違�螗挨韋長取ⅳ餞欷�槨蓼課餮螭韋瑜恧い韋勝�恕ⅳ坤欷����欷皮い毪瑜Δ蕷蕒�筏皮勝槨勝�盲郡長趣勝嗓頡ⅳ玀欷勝�挙筏郡�ⅳ郡饋ⅴ蓀飽氓趣韋勝�摔ⅳ搿⒒平黏渦∠浹韋長趣坤堡稀ⅳ嗓Δ筏皮庠挙工長趣�扦�勝�盲俊¥餞欷趣いΔ韋�憒�嬰趣韋�郡ぜs束があるからなのだ。
金田一耕助は話を聞いて、びっくりして目を丸くしていたが、それにもましておどろいたのはおかあさんである。おかあさんはまっ青になって、
「まあ、そ、それじゃ文彥、そのひとはおまえの左腕にある、あのあざ[#「あざ」に傍點]を眨�伽郡趣いΔ巍�
「そうです。おかあさん。そして、これがあるからには、まちがいないといいましたよ」
「まあ!」
おかあさんの顔色は、いよいよ血の気を失った。金田一耕助はふしぎそうにその顔を見守りながら、
「おくさん、なにかお心當たりがありますか?」
「いえ、あの……そういうわけではありませんが、あまり変な話ですから……」
おかあさんの聲はふるえている。おかあさんはなにか知っているらしいのだ。なにか心當たりがあるらしいのだ。それにもかかわらずおかあさんは、文彥や金田一探偵が、なんどたずねても話そうとはしなかったのだった。
金田一探偵はあきらめたように、もじゃもじゃ頭をかきまわしながら、
「なるほど、するとその老人は、文彥くんの左腕にある、ダイヤがたのあざ[#「あざ」に傍點]を眨�伽俊¥趣長恧�餞欷�殫gもなく、だれかがダイヤのキングをスギの木に、くぎづけにしていったのをみると、ひどくびっくりしたというんだね」
「ええ、そうです、そうです。それこそ気絶しそうな顔色でしたよ」
「そして、客間のよろいのなかに、だれかがかくれていたと……」
金田一耕助はまじろぎもしないで考えこんでいたが、
「とにかく、それは捨てて