ら。良平、おまえじぶんのへやへいって野球のバットを持ってこい」
良平がバットを持ってくると、おじさんは、それを片手にひっさげて、応接室のドアのまえまでソッとしのびよった。良平もそのあとからくっついていく。心臓がガンガンおどって、胸がやぶれそうだった。
応接室のなかにはたしかにだれかいるのだ。ガサガサという音が聞こえる。しかし、ふしぎなことにはそれにまじって、ひくいすすり泣きの聲が聞こえるのである。
おじさんもそれを聞くと、さすがにギョッとして、息をのんだが、すぐに気をとりなおして、ドアのにぎりに手をかけると、いきなりぐっとむこうへ押しながら、
「だれだ! そこにいるのは!」
そのとたん、へやのなかでは、ドタバタといすやテ��芝毪摔證膜�胍簸�筏郡�ⅳ浹�皮坤欷��櫎�櫫玀丐趣嬰坤筏俊�
「ちくしょう、ちくしょう!」
おじさんはむちゃくちゃにドアを押したが、むこうから、つっかいぼうがしてあるらしく、十センチほどしかひらかない。
「だめだ。良平、庭のほうからまわろう」
かって口から庭へ出ると、裡木戸があけっぱなしになっている。ふたりはすぐそこから道へとびだしたが、あやしいものの影は、もうどこにも見當たらない。
しかたなしにふたりは、応接室の窓の下までひきかえしてきたが、そのとたん、ギョッとしたように息をのみこんだ。
窓のなかから、まだすすり泣きの聲が聞こえてくるではないか。
良平もおじさんも、それを聞くとゾッとしたように顔を見合わせたが、すぐつぎのしゅんかん、おじさんは窓をのぼって、へやのなかへとびこんだ。良平もそれにつづいたことはいうまでもない。
おじさんが電気のスイッチをひねったので、応接室はすぐに明るくなったが、見ると、そこにはひとりの少女が、いすにしばられ、さるぐつわをはめられて、目にいっぱい涙をたたえ、むせび泣いているではないか。
おじさんはいそいでそのナワをとき、さるぐつわをはずしてやると、
「きみはいったいだれなの。どうして、いまごろこんなところへやってきたの?」
おじさんは、できるだけやさしくたずねたが、少女はただもう泣くばかりで、なかなかこたえようとはしないのだ。
「良平、おまえこの子知ってる?」
「ううん、ぼく、知りません。いままで一度も見たことのない子です」
まったくそれは見知らぬ少女だった。としは良平とおないどしくらいだろう。みなりこそまずしいけれど、かわいい、りこうそうな顔をした少女だった。
おじさんはまた、なにかいいかけたが、そのときドアを外からたたいて、
「まあ、欣三さん、良平、どうしたの。なにかあったの。いまのさわぎはどうしたの?」
そういう聲はおかあさんである。見るとドアのうちがわには、大きな長いすが押しつけてある。おじさんはそれを押しのけながら、
「アッハッハ、ねえさん、なにもご心配なさることはありませんよ。どろぼうがはいったのですがね、かわいいおきみやげをおいて、逃げてしまいましたよ」
「まあ、そしてなにかとられたの」
おかあさんのそのことばに良平は、はじめて気がついたように、へやのなかを見まわしたが、すぐアッと叫ぶと、
「おじさん、おじさん、やっぱりそうだよ。どろぼうはあの劍�頦踏工撙摔�郡螭坤琛�
その聲におかあさんもおじさんも、ハッと壁のほうをふりむいたが、そのとたん、ふたりともおもわず大きく目を見張った。
ああ、どろぼうはあきらかに、悪魔の畫像をぬすみにきたのである。
しかし、あの大きながくぶちから、はずすことができなかったので、ふちから切りぬいていこうとしたのだろう。半分ほど切りぬかれたカンバスが、ダラリとがくぶちからぶらさがっているのだった。
どろぼうの忘れ物
おじさんが電話をかけると、すぐにおまわりさんがやってきた。そのおまわりさんは|上《かみ》|村《むら》さん