れたように走り出していた。蹲って震えている健人を見たら、放っておけなかった。嫌っていて、顔も見たくない、口も利きたくないと思っていたのに、どうして抱きしめてしまったのか自分の行動が分からなかった。
「……何、してんだ。俺は……」
部屋の扉に憑れて、ずり落ちていく。恐る恐る名前を呼ばれた聲が忘れられない。
健人が、名前を呼ぶのは、初めてのことだった。落ち著かない鼓動を抑えるように、歩は自分の胸を握り締めた。
ようやく雨もやみ、心拍數が落ち著いてきた頃、濡れた服にク��椹‘の風が當たり健人は身震いした。抱きしめられただけでこんなにも濡れてしまったのだから、歩はもっと濡れていたんだろう。たまたま外に居るときに雨が降ってきてしまったのか、それとも健人が怖がっているのを知って、雨が降っている中を帰ってきたのかどうかは分からない。けれど、大丈夫と言って宥めてくれた聲が忘れられなかった。
このままでは風邪をひいてしまうと思い、健人は立ち上がった。部屋に向かおうとして階段の近くに行くと、びしょぬれになったカバンが放置されていた。それは紛れも無く歩のもので、こんなところに放置していても邪魔なだけだ。片付けようとして、伸ばした手が止まる。勝手に片付けたりなんかしたら、歩は機嫌を悪くしそうだ。しかし、気づいてしまった以上、放置しておくのも気が引けてどうすればいいのか分からなかった。
階段から降りてくる足音が聞こえ、健人はとにかくこの場から立ち去ろうとソファ��貞�搿%譬‘ブルの上に置いてあるリモコンを手に取り、テレビをつけた。それと同時ぐらいに扉の開く音が聞こえて、心臓が飛び跳ねた。
「ねぇ、健人」
普通に話しかけられ、健人は振り向く。どう返事をして良いのか分からず、聲を出すことができなかった。歩はまだ服を濡らした�